フェデリコ・ベルナルデスキに夢を見る(By Kan)



フェデリコ・ベルナルデスキに夢を見る

ライター:Kan

蝶のように舞うドリブル突破、その正確無比な左足から描かれるゴールへの美しい放物線。これらたった二つの要素だけでも僕を虜にするには十二分だった。彼の名前はフェデリコ・ベルナルデスキ。イタリア・トスカーナ州はカッラーラに生まれ、フィオレンティーナの下部組織で育ったベルナルデスキは2014-15シーズンに20歳でトップチームデビューを飾る。そのシーズンは年末に負ったケガの影響から満足のいく活躍とはいかなかったものの、カンピオナート最終節のキエーヴォ・ヴェローナ戦ではセリエA初ゴールを記録。翌シーズンからは背番号10を身に纏い、チームの中心選手として活躍する。そして2017年7月24日、移籍金4000万ユーロでユベントスへの加入が発表される。背番号は33番を背負ってユベントスの選手としての道を歩みだした。

 

フィオレンティーナ時代と同様に前線の選手として活躍が期待されるも2017-18シーズンはセリエA、コッパ・イタリア、UEFAチャンピオンズリーグ、スーペルコッパ・イタリアーナの4つのコンペティション合計で31試合出場5ゴールとFWとしては物足りない数字に終わる。第24節のアルテミオ・フランキでの古巣フィオレンティーナ相手の直接FKなど、印象的なゴールはあったものの記録としては伸び悩んだ。

2年目の18-19シーズンは開幕節のキエーヴォ・ヴェローナ戦で後半アディショナルタイムに劇的な決勝ゴールを挙げるなど、幸先のいいスタートを切る。クリスティアーノ・ロナウドの加入もあり、このシーズンは主に右ウィングとして出場機会を得る。しかし、ゴール数は前年より減少して3ゴール、アシスト数は前年と同じく6アシストにとどまった。筆者の印象としては、我々観る側の感じる彼の試合への貢献度にゴールやアシストなどの数字が伴っていないのではないかというところである。このシーズンから加入したロナウドにボールを集めることに重心が傾いていたことはその要因の一つであるといえる。それに伴ってか、18-19シーズンから彼は肉体改造に取り組み、それが顕著にみられるようになった。しかし、それによって以前のようなプレーの繊細さはどこか遠くへと消えてしまったように感じられる。このシーズン、アッレグリは彼をメッザーラとして起用することもしばしばあったが十分な活躍をみせたとは言えない出来に終始した。

その一方でポジティブな面がみられたのはこのシーズンの彼にとってのベストゲームといえるUCLラウンド16、アトレティコ・マドリードとの2nd leg だろう。3トップの一角として先発したベルナルデスキは先制点のアシストや3点目のPKを誘発させた長距離のドリブル突破など、今でも強く印象に残っている。

 

 

そしてサッリを新監督に迎えた19-20シーズン、ベルナルデスキは38試合出場、2ゴール3アシスト。記録としても減少傾向にあることは明らかだが、それ以上に起用方法(ポジション)に変化がみられた。例年同様に右ウィングでの起用もあったものの、2トップのイグアインとロナウドを支えるトップ下で守備に奔走するという試合が目立った。前述したように肉体改造の甲斐もあってかこの起用は彼をチームのバランスをとる選手として使うという点では功を奏していたといえるかもしれない。だがこれもほぼ前半戦のみでみられ、同ポジションを争っていたドウグラス・コスタの負傷欠場が重なったこともあり後半戦は右ウィングでの出場が多くなった。なかなかゴールが遠く、燻っている姿は見るに堪えないものであったが、セリエA9連覇を決めた第36節のサンプドリア戦ではカンピオナートでのシーズン初ゴール、勝利を手繰り寄せる2点目を決めた。クリスティアーノ・ロナウドのシュートを相手GKのアウデーロが弾いたところを全速力で詰め、気持ちで押し込んだゴールだった。直後に彼は雄叫びを上げて感情をあらわにし、我々ティフォージも待ちわびていたゴールに大きな喜びを覚えた。

 

コロナ禍により満足のいく準備ができずに始まった20-21シーズンはピルロ監督のもと若返ったチームは歩みだすわけだが、ベルナルデスキには強力なライバルが2人現れる。デヤン・クルゼフスキとフェデリコ・キエーザ。前者は開幕戦でのゴールという最高のスタートを切るもなかなか最適解が見いだせず、それでも37試合と出場機会を得ながら終盤には自身の活路を見出し4ゴール3アシスト。後者は伸び悩むチームの中でも新加入ながらひとり気を吐く活躍を魅せ、44試合出場14ゴール10アシスト。皮肉にも、フィレンツェの同じクラブから満を持してユベントスにステップアップを果たした「後輩」にポジションを奪われることになったのだ。

その一方で、ベルナルデスキは27試合出場0ゴール2アシストと鳴かず飛ばずの結果に終わっていた。しかし、クラブで燻ってはいたもののイタリア代表に召集された際には可変式4-3-3を採用するチームにおいて主に前線の3ポジションで起用され、場所を問わず躍動したことはポジティブな要素であった。先日行われた親善試合のサンマリノ戦ではキャプテンマークを巻いてフル出場、1ゴール2アシストを記録し現地紙『La Gazzetta dello Sport』の評価は7.5とEURO2020に臨む代表メンバーにふさわしいと己の価値を証明して見せた。

 

そしてユベントスはアンドレア・ピルロを解任し再び監督にアッレグリを招聘。この魔将はベルナルデスキを復活させることができるだろうか。噂には再びのメッザーラでの起用も構想にあるとのこと。アッレグリの帰還については「楽しみたい。(ユベントスへの)復帰に満足している。」とベルナルデスキ本人も好意的なコメントを残している。

ベルナルデスキの再起を切に願うばかりだ。いまもまだなお、あの雄姿を追い続けて、フェデリコ・ベルナルデスキに夢をみている。

ライター:Kan

 

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Posted by 編集長ミツ