こんなはずではなかった… あてが外れた男たち~パブロ・オスバルド編(by taro)



こんなはずではなかった… あてが外れた男たち~パブロ・オスバルド編(by taro)

ライター:taro(grande_avvocato)

  • パブロ・オスバルト(1986年1月12日ブエノスアイレス生まれ)
  • 国籍:イタリア/アルゼンチン
  • 代表歴:イタリア U-21代表として12試合2ゴール、フル代表として14試合4ゴール
  • ユベントス在籍期間:2014年1月〜6月(サウザンプトンより買取オプション付きレンタル移籍→オプションは行使されずシーズン終了後に返却)
  • ユベントス在籍期間中の出場記録:11試合1ゴール

 

キャリア

若くしてイタリアに渡りアタランタ、レッチェ(ともに当時セリエB)でプレーし、そこからステップアップ。20代前半は成績にムラがあるも20代半ばで移籍したエスパニョールで通算44試合20ゴールを記録し、ASローマにステップアップ。ローマでもさらにブレイクし、移籍1年目は26試合11ゴール、2年目は29試合16ゴールを挙げ、キャリア晩年を迎えたトッティに替わる新たなエース候補として名乗りを挙げるはずだった。

しかし性格に難があり、同僚をブン殴る、試合中に相手を蹴りとばすなどなど問題行動に事欠かず、さらにはPKキッカーを本来のキッカーであるトッティから奪い取って蹴った挙句に失敗してしまい、激怒したサポーターと試合後に空港で喧嘩を始める始末。その後も首脳陣批判など問題行動を繰り返したため、イタリア代表から追放され、サポーターと険悪な関係は続いたままだったのでローマから石もて追われるように去っていった。

そしてローマから厄介者を押し付けられたプレミアリーグのサウザンプトンに加入するも気性難は改善されておらず、期待ほどゴールは挙げられないわ、加入早々にチームメイトと喧嘩を始めるわなど早くも獲得したことを後悔するハメに。

 

ユベントス加入の経緯

2012-2013シーズンのリーグチャンピオンとして臨んだUEFA Champions Leagueにおいて、まさかのグループリーグ敗退を喫し、Europe League行きとなってしまったユベントス。失ったノックアウトラウンド以降の収入を少しでも回収すること、さらには2013-2014シーズンのEurope LeagueのファイナルがトリノのJuventus StadiumであることもあってEurope League制覇が至上命題となった。

もちろん、『勝て勝て勝て勝てホームやぞ(by ガンバ大阪)』で勝てるほど甘い世界ではない。グループリーグ敗退の原因を分析し、対策を打たなければならない。そして出た結論がコンテの手腕FWの得点力不足。そのため新たなFWを探しているユベントスとせっかく大枚叩いて買ったのに活躍するどころか問題行動を起こしてばかりで放出の機会を探していたサウザンプトンの利害が一致し、とりあえず買取オプション付きのローン移籍で加入することが決定。

 

 

ユベントス加入後の活躍

このシーズンはジョレンテ、テベスの凸凹ツートップが大活躍。シーズン序盤は契約のトラブルからまる一年飼い殺されていたジョレンテの調子が上がらず、ただの電柱でしかなかったが、徐々に圧倒的なフィジカルと高い足元技術に裏打ちされたボールキープ力をいかんなく発揮し、ユベントス攻撃陣の活性化に多大な貢献をしていた。そしてテベス。もともと基本技術が高いうえにジョレンテの存在のおかげで前を向いてボールを持てるためにもう手がつけられない状態。そんな中、シーズン途中加入なうえに『ひとりでできるもん』系プレーヤーではない、さらには記録的なペースで勝点を積み重ねるユベントスに対し、2位のローマもこれまた記録的なペースで勝点を積み上げているため、もともとターンオーバーというかローテーションという発想が頭の中にないを活用しないコンテのもと、オスバルドの出番は非常に限られたものに。

ここまで書いてきてなんですが、オスバルドが11試合も出ていたことにこの記事を書くために調べ物をして初めて知りました(笑)シーズン全試合見ていたはずなのに(苦笑)
ローマやサウザンプトン時代に見られた問題行動はユベントス在籍期間内には起こしていないのでオスバルドに問題がないとは言わないけど、クラブにも問題があったのではないかと思ったり思わなかったり。

 

こんなはずではなかった

コンテ:点を取れるフォワードを連れてこいと言ったのに全然点を取らないじゃないか!話が違うぞ(怒)

オスバルド:フォワードが必要だというから来てやったのに全然出番がないじゃないか!話が違うぞ(怒)

 

そしてお互いに思ったはずである。

「こんなはずではなかった」

 

オスバルドが漢になった日

UEFA Champions Leagueグループリーグ敗退、Europe Leagueもベスト4で敗退し、本拠地でトロフィーを掲げる夢が破れたユベントスにとって、自らを慰められる成果はリーグ3連覇に華を添える、前人未到の勝点100到達しか残っていなかった。優勝を決めた35節時点での勝点は93。そして36節も勝利し勝点を96に伸ばしたところで37節の対戦相手はローマ。舞台はオリンピコ。 二位ローマにしてみればホーム最終節でスタジアムを埋めるロマニスタの前で勝って少しでも溜飲を下げたいところ。そしてユベントスにとってはこの試合に負けると勝点100に届かなくなるからなにがなんでも勝たなくてはならないところ。そんな両者の思惑を秘めて、試合はスタート。ユーベはこの試合も凸凹ツートップが先発し、これまでと同じように攻めたてるが、GKの好守の前にゴールを奪えない。翻ってローマも何度かユーベゴール前に進出し、惜しいチャンスを作り出すものの、これもまた最強の2ndゴールキーパー、マルコ・ストラーリの前にゴールを奪うことができない。

こう着状態が続いたのち、コンテが動く。オスバルドを投入したのだ。

7年も前の話だ。どういう意図をもって投入されたのか覚えてない。とにかくフォワードを増やせば点を奪えると考えたのかもしれない「お前を追い出したローマサポーターの前でプレーで見返してやれ」という意図以外に考えられる理由があるだろうか。いや、そんなことは絶対考えてないと思う。

そしてせっかく投入されたのにいつもと同じように活躍できないオスバルドがいた。後半アディショナルタイムも残り少なくなり、主審が時計を気にし出すまでは。右サイド奥深くまで侵入した誰か(ごめんなさい)からのマイナスのクロスボールに右足を一閃。ファーサイドのサイドネットにボールが突き刺さる。見事な流し打ちでライトスタンドに飛び込むサヨナラホームランオスバルドが遂にゴールを決めた!敵地オリンピコで決めた!咆哮するオスバルドそんなだから追い出されたんだぞ。

 

詳しくは公式に動画があったのでこちらを↓

 

そして直後に試合終了を告げるホイッスルが鳴り響く。
自らを追い出したロマニスタの前で決めた決勝ゴール。そうだ、この瞬間オスバルドは漢になったのだ。

 

宴のあとで

ローマを下して勝点を99に伸ばしたユベントスは最終節も勝利し、勝点102でシーズンを終えた。全ての試合に勝って得ることができる勝点が112。そのうちの102を手にした(通算34勝2分2敗)圧倒的なシーズン。しかし、そこにはUEFA Champions Leagueでのまさかのグループリーグ敗退、不本意ながら戦ったEurope Leagueでのベスト4敗退というホロ苦い思い出も残る。

さて、オスバルドは買取オプション付きのローン移籍でユベントスにやってきた。そこで買取オプションが行使されるのかに注目が集まったが(たぶん)、いくら重要な場面でゴールを決めたとは言え、半年でその1ゴールしか決めることができなかったフォワードに存在価値はあるだろうか、いや、ない(反語表現)。というわけでオスバルドとユベントスの物語は半年でエンディングを迎えることになる。お互いにハッピーエンドではなかったかもしれないけれど、それでもオリンピコで決めたゴールは色褪せない。ユベンティーニに『オスバルドここにあり!』を刻みつけたことは間違いないだろう。

 

 

その後の物語

ユベントスでの半年を終え、サウザンプトンに戻ったオスバルド。しかしそこにはもう彼の居場所はなかった。すぐさま今度はインテルナツィオナーレ・ミラノというユベントスのお下がり大好きクラブにレンタルされるのである。

そしてユベントスも激動のときを迎える。

オスバルドに替わるストライカーとしてモラタの獲得を決めていたが、コンテが自らに求められる結果に対してサポートが見合っていないとブチ切れ、電撃辞任したのである。自分へのサポートを10エウロの小遣い、そしてUEFA Champions Leagueの舞台をコース料理が100エウロするレストランに例え、「クラブは100エウロのレストランでメシを食えと言うが、自分に渡された小遣いは10エウロだった。10エウロのカネでどうやって100エウロの料理を食べればいいんだい?」と不満をブチ撒けた。

斯くして、新しいJuventus Stadiumで満員のサポーターから惜しみない愛情を注がれたコンテとの冒険も唐突にエンディングを迎えることとなったのである。しかしその10エウロの小遣いでアッレグリは100エウロのコース料理を堪能できたんだから10エウロの価値を増やせなかったコンテが無能なだけだと言ってはいけない。

 

ここまで駄文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

第二弾に続く?

 

ライター:taro(grande_avvocato)

 

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Posted by 編集長ミツ