【ありがとう、パウロ・ディバラ】2021-22シーズン第37節 vs ラツィオ戦 マッチレビュー



ユベントス 2-2 ラツィオ

 


 

諸々の事情があり7~8年の時間を離れて、ボクがユベントスに戻って来たのが2017-18シーズン。ヨーロッパのサッカーもほとんど見れていなかったので、チームの中で知っていたのはブッフォン、キエッリーニ、マルキジオ、そしてバルザーリと言った「昔ながらの」選手のみ。イグアインとケディラはかろうじて「レアル・マドリーにいた選手だよな」って程度で認識はしていたけれど、ピャニッチにしてもクアドラードにしてもドウグラス・コスタにしても、名前すら耳にした事がなかった。もちろん、このシーズンから背番号10を背負う事になっていたパウロ・ディバラにしても。

 

 

ボクはアレッサンドロ・デル・ピエーロが大好きで、いまでも「生涯で唯一のファンタジスタ」だと思っている。もちろん、そこにロベルト・バッジョの名前を加える事に異論はないけど。

デル・ピエーロはとにかく華やかだった。パス、ドリブル、シュート、そして端正なルックス。1990年代半ばから後半にかけてセリエAを見始めた時、当時放映権を持っていたWOWOWで放送されるのは毎節1試合(後に2試合以上になるが)。もちろんユベントス、ミラン、インテルと言ったビッグクラブの試合が中心ではあったものの、割合で言えばユベントスの試合は3週に1回。当時はセリエの試合が見られるだけでも嬉しかったので、それこそユベントスの試合もミランの試合もインテルの試合も、放送される全部の試合を観戦した。

でも、ボクはユベンティーニになった。なぜなら、アレッサンドロ・デル・ピエーロに魅せられたからだ。

 

 

それから長い時間が経過し、新たな背番号10が目の前に現れた。その名は「パウロ・ディバラ」。少し小柄で、そしてサッカー選手と言うよりはアイドルグループの一員のような顔立ち。少しの頼りなさを覚えたものの、数試合を見ただけでそれは払拭された。ボクがユベントスに戻って来た2017-18シーズン、ディバラは開幕から6試合で10ゴールを挙げる活躍を見せた。まさに「圧巻」のひと言であり、ボクは「デル・ピエーロの再来だ…」と呟いた。

このシーズンは怪我こそあったものの、終わってみれば26ゴール・7アシストの大活躍を見せ、ボクも含めた誰もが「パウロ・ディバラの時代が来る」と確信した。しかし、2017-18シーズン終了後、ユベントスはクリスティアーノ・ロナウドと言う怪物を獲得する事を決断する。

それによりディバラは主役の座から引きずり降ろされた。しかし、過熱するロナウド・フィーバーの中、そこに注目するファンはほとんどいなかった。ロナウドの存在はあまりにも大きすぎた。

 

その後はセリエA MVPを獲得するなど良い時もあれば、ベンチを温める時間もあり。安定しないコンディションとパフォーマンスに業を煮やしたサポーターからは、時に厳しい声を浴びされる事もあったし、それこそ放出の噂が強く打ち出される事もあった。

それでもディバラは戦い続けた。

 

 

そして2022年。ユベントスはその前の秋に「契約更新」を口約束していたものの、冬のマーケットでヴラホビッチを獲得した事で方針が一転する事になる。「パウロ・ディバラとは契約を更新しない」。アッリバベーネがそれを口にした時、誰もが信じられない思いだったに違いない。「あのディバラを放出するのか?しかもトランスファ・フリーで」。

しかし、これもカルチョの世界であり、これがユベントスと言うチームだという事を一番認識していたのは、その中で戦っていたディバラ本人なのかもしれない。

 

 

2022年5月17日。果たしてディバラはホームゲーム最終節を迎える事になる。ポジションは最も得意とするトップ下を任され、途中交代となる後半33分までディバラは楽しそうにプレーする姿を見せた。そんな中、誰もがゴールを期待したが、ゴールネットを揺らす事は出来なかった。何ともディバラらしい幕切れだった。

強靭でもなければ完璧でもない。むしろ脆い所すらある。

でも、それがパウロ・ディバラの魅力だった。

 

 

ディバラは今シーズン限りでユベントスを離れる事になるが、サッカー人生が終わる訳ではない。例えプレミアリーグでプレーしようとも、リーガ・エスパニョーラでプレーしようとも、今の時代に見る事ができない映像はない。ボクは「ディバリスタ」として元同僚を追い続けるだろう。

 

 

長いユベントスの歴史において、これだけ愛された選手はどれだけいるだろうか。ボクは片手ほどしか思い浮かばない。

惜しまれながらチームを去る事になるが、それはディバラが愛され続けた証でもある。

悲しい気持ちがあるのは当然だ。でも、ボク達は笑顔でユベントスの宝石を送るべきだろう。

パウロ・ディバラは最も笑顔が似合う選手なのだから。

 

 

 

 

2017-18シーズン。

 

ボクを魅了してくれてありがとう。

 

ボクをユベントスに戻してくれてありがとう。

 

 

今度は「パウロ・ディバラの再来」が現れる日を楽しみにしている。

 

 

あなたの幸せを心より願っている。

 


【月ユベ編集部より】

キエッリーニついては、また別の形で振り返ります。