“7000万ユーロの賭け直し” ヴラホヴィッチ、トゥドール体制で復活への第一歩
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イゴール・トゥドールのユベントス監督就任は、ドゥシャン・ヴラホヴィッチを巡る状況に即座に波紋を広げた。停滞が続いていたセルビア人FWにとって、ようやく差し込んだ一筋の光明。まだ再生の兆しを語るには時期尚早だが、ティアゴ・モッタの後任として初陣を飾った指揮官の狙いは明確だった。7000万ユーロの男を復活させるための、一種のギャンブルである。
トゥドールがジェノア戦で披露したのは、縦への意識を強調した3-5-2。ポゼッション重視のモッタとは異なるアプローチだ。そのなかで、2025年の大半をベンチで過ごしていたヴラホヴィッチがスタメンに復帰。前線の軸として起用され、フィジカルを武器に相手DF陣を押し下げ、スペースを生み出す役割を担った。
ユルディスの決勝点を導いたプレーも象徴的だ。トゥドールの素早いスローインから展開された流れの中で、ヴラホヴィッチが見せたのは実に控えめなタッチ。しかし、それはチームの勝利を引き寄せる大きな布石となった。自身の得点こそなかったが、エゴを捨てた振る舞いに新たな覚悟が見えた。
クラブは依然として約3000万ユーロでの売却に前向きとも報じられているが、指揮官の信頼が示されたタイミングは極めて重要だ。契約は2026年まで残されており、トゥドールのもとで再起を期すべく、代表戦から早期にクラブへ戻った姿勢も評価されている。
もちろん、わずか1試合で将来を占うことはできない。ただ、トゥドールが「彼にはトップクラスの才能がある」と公に称賛したことからも、ヴラホヴィッチがチャンピオンズリーグ出場権を目指す戦いにおいて中心的な存在と見なされていることは明白だ。
また、試合後のコメントでは、審判への不満を繰り返すヴラホヴィッチの姿勢にも言及。「エネルギーの無駄遣いだ」と苦言を呈しつつ、「ゴールを渇望しているように見えた」と評価も忘れない。厳しさと励ましを巧みに使い分けることで、精神面の再構築も図る構えだ。
トゥドールにとって、彼はかつて「イタリア最高のストライカー」と称えた存在。その空中戦の強さとゴール前での嗅覚は、縦に速いスタイルとの親和性も高い。今回の抜擢は、再浮上への一歩か、それとも移籍市場での価値向上を狙った起用か。ユベントスの“賭け”は、今まさに始まったばかりである。