【kassimania】ユヴェントスの補強戦略考



ユヴェントスの補強戦略考

CLの敗退を受けて異例中の異例だったユヴェントスの19-20シーズンが幕を閉じた。

みなさんご存知の通り、サッリ監督は今シーズンをもって退任。新監督は誰もが驚くアンドレア・ピルロだ。

新監督の就任により新たな選手の獲得や放出の噂が活発になってきたので今回、選手登録のルールとユヴェントスの現状をおさらいした上で夏のメルカートの動向を読んでいきたい。

 

 

選手登録のルール

 

・クラブ内育成選手と協会内育成選手

セリエAもCLも選手登録について、「クラブ内育成選手」と「協会内育成選手」を規定の人数登録しなければいけないという定めがある。クラブ内育成選手と協会内育成選手のおおまか概要は下記の通り。(国籍は問わない。)

 

  • クラブ内育成選手:15~21歳までの間に3シーズンもしくは36ヶ月自チームに在籍していた選手。
  • 協会内育成選手:15~21歳までの間に3シーズンもしくは36ヶ月当該国の協会に所属するクラブに在籍していた選手。

 

簡単に言うと、「自分のクラブで育てた選手と自国リーグで育った選手は必ずチームに含めて下さいね」というルールだ。

注意したいのは下部組織の在籍歴。シーズン終盤に抜擢され溌剌としたプレーを見せたザニマッキアやフラボッタはクラブ育成枠の選手にはならない。

 

・セリエAの登録ルール

セリエAの最大の登録数は25名。そのうち4名をクラブ内育成枠、4名を協会内育成枠にしなければならない。尚、21才以下の選手は25名の枠とは無制限に登録可能である。

 

・CLの登録ルール

CLも最大登録数は25名。クラブ内育成枠と協会内育成枠4名ずつなのはセリエAと変わらない(これをAリストという)が、21才未満の選手は過去2年間クラブに在籍があれば常に変更可能な(厳密には試合前日の深夜0時まで登録可)Bリストに無制限で登録できる。CLの方がより厳しいルールとなっている。

それぞれの基準を満たさない場合は罰則としてその数だけ25名の登録数から制限を受ける。ユーヴェがCLで22名体制なのはこのためだ。

 

19-20シーズンの選手登録状況は以下の通り

 

セリエAでもCLでもクラブ内育成枠が4名必要なところ、ピンソーリオしかいないため、上限の25名引く3名で22名登録だが、セリエAではU-21のデリフト、デミラルは上限無く登録できるため最終的に23名の選手を登録している。(ルガーニはセリエAではクラブ育成枠との情報あり、シーズン序盤にマンジュキッチとジャンを登録できたのはこのため)

CLではセリエAで無条件に登録できたU-21の2人をBリストに入れる事が出来ず、Aリストで登録しなければならない。よって22名しか選手を登録できないのだ。

 

 

今シーズンの開幕当初、マンジュキッチ、ジャン、キエッリーニ(怪我)がリストから外れ、結果としてマンジュキッチとジャンは冬にチームを離れた。(心情を無視すればこの3名のリスト漏れは妥当だとは思っている)

有力選手のリスト漏れは今に始まったことではなく数年来の問題だ。昨シーズンは前半にスピナッツォーラ、後半はクアドラードがリストから漏れ(両選手とも怪我の影響を考慮された)、16-17、17-18シーズンはリヒトシュタイナーがリスト漏れしている(両シーズンとも決勝トーナメントからは復帰)。選手にとってCLに出場できるかどうかは死活問題。やがて不満分子となりチーム全体の士気にも係わる問題と発展する可能性もある。この選手の年俸もバカにならないため財政的な負担も増す。

加えて、怪我人の多さからまともにトップチームでメンバーを組めなくなるのも今シーズンに限った話ではない。ユヴェントスは、クラブ内育成選手の少なさに「今は」割り切っているように見えるため、恐らく来シーズンもCLに登録できるのは22名のままだ。近年の怪我人続出からのスカッドの薄さや各ポジション毎の編成の偏りなどはこの登録枠の制限が大きく影響しているのだ。

※ピルロが来シーズン、U-23から数名トップチームに帯同させるとの報道もある。どうなるか様子を見てみよう。

 

 

20年夏のメルカートの動向

話をメルカートに戻そう。以上を踏まえてこの夏の動向を予想したい。執筆中の状況は下記の通り。ちなみに噂レベルで上がっている獲得候補の具体的な選手についての言及は控えさせていただく。

 

<放出>
ピャニッチ、マテュイディ

<獲得>
クルゼフスキ、アルトゥール

 

今のところ、放出も獲得もイーブン。財政上ユヴェントスはまず放出が先行して戦力をスリムにさせなければならない。しかし、枠の問題で放出した分だけ獲得もしないと頭数が足らなくなる。何とも難しい舵取りが必要になる。

 

4-3-3システムを前提とした各ポジションの状況をおさらいする。※()は8/16現在の選手数

 

・GK (3)
シュチェスニーの能力に不足無く、ブッフォンとは契約延長済み。そしてピンソーリオは貴重なクラブ内育成選手。補強、放出の必要性無し。
*ローン中のペリンの移籍を進める必要はある

・CB SB (8)
CBは現在5名で枚数は問題無しも、デミラルとキエッリーニが長期負傷明けとなり、更にデリフトが肩の手術のため3ヶ月OUTの報道。個人的にはこの状況ならルガーニを残留させた方がいいと思うが、オファー次第で売却もやむを得なし。
SBは意見が分かれるポジション。今シーズン、クアドラードのSBとしてのプレーには満足しているが、ピルロ監督が現SBをどう判断するかは未知数。ただSBを新たに獲得する場合は他のポジションから放出を進めなければならず、限られた予算はMF、FWに回すべきと考える。引続きSBはマルチ含めた3名+αで回すのではないだろうか。

・MF(5)
現在、MFは5名(ベンタンクール、ラビオ、アルトゥール、ラムジー、ケディラ)。しかし、ケディラ、ラムジーは高額の年俸と稼働率の低さがネックとなり、どちらか、あるいは両方放出でもおかしくない。個人的に両選手のスペースへのフリーランは残留当確の選手にない特徴なのでどちらかは残留でもいい気がするのだが、、、。
そしてアンカーだが、現在のメンバーのコンバートがない限りこのポジションが務まるのはベンタンクールのみ。この位置を本職とする選手の獲得は必須だ。
よってアンカーと放出候補二人のそれぞれ代わりの選手を獲得した6名体制が望ましい。ただし、クルゼフスキやベルナルデスキのような選手がWGとMFを兼任してくれれば5名体制+αでも問題ない。

・FW(7)
ぼくが考える20-21シーズンの最大の補強ポイント。
現在7名体制(イグアイン、ディバラ、ロナウド、D・コスタ、ベルナルデスキ、クアドラード、クルゼフスキ)
唯一のCFイグアインが放出候補の筆頭となる為、代わりのCFの獲得は急務。
4-3-3を前提として考えると、ディバラの起用法や去就で必要な枚数や選手のキャラクターも変わるデリケートな補強ポジションだと言える。今シーズンのように偽9番での起用がメインならCFは1枚の獲得で済むが、WGでの起用がメインならCFは主力の選手とその控えの2枚が必要になる。

そのディバラだが、契約延長に際して€1500万の年俸を要求という報道が出て移籍の噂が再燃している。今、クラブが必死に年俸の削減を推し進める中この要求は少し法外なように思える。どこに落としどころを見つけるか注目したい。
WGはクルゼフスキを確保しているため、Dコスタかベルナルデスキの放出は必至。両方放出となる場合、ウィングに新たな選手が必要になるが個の力で打開できるこのポジションの選手は非常に高額な移籍金がかかるためどちらかは残留するのではないかと予想する。
いずれにせよSBを兼務するマルチのクアドラードを含めた6~7名体制が理想だ。

 

 

まとめ

20-21シーズンも22名~23名体制と考える。
4-3-3に落とし込むとこのようになる。
報道に上がる事の多いルガーニ、D・コスタ、ケディラ、ラムジー、デシリオ、(ベルナルデスキ)を放出したと仮定している。

 

上記はディバラをWGで起用するパターン。このケースが新たに獲得する選手数も多く主力のCFに多額の移籍金がかかるためコストもかかるパターンだ。CFの2ndチョイスは移籍金も年俸も安い若手になるだろう。万が一ディバラとの契約延長が決裂した場合もこのパターンとなるのでは。その場合局面打開力にたけたWGを獲得することになるだろう。

 

上記は引き続き、ディバラを偽9番で起用したパターン。基本的な選手層は19‐20シーズンと一緒だ。主力選手を獲りに行くわけではないので獲得コストが比較的抑えられる補強戦略といえる。

 

上記は新たなSBを獲得するパターン。3つある3CHのポジションを5枚+マルチの選手で回す。クアドラード以上の活躍を見込めるSBを獲得できる場合このパターンに収まるのではないだろうか。

CLの登録枠上限22名に当て込むと、GKで3枠使うためどこかに必ず控え不在の状況になる。今シーズンユヴェントスのスカッドは歪んでいると指摘する方も多かったが、22名体制に加えて怪我人の多さも原因の一つだ。(ちなみに18-19シーズンはMFが5名だったがケディラが怪我がちのため4名で回していた)。正直、今後どのポジションで誰を放出、獲得してもパズルのように全体のバランスを整えるのがかなり難しく感じる。フロントの手腕に期待だ。

 

 

ピルロ監督にまず求められるのはそれぞれの選手の特徴を早い段階で把握してある程度の起用法を確立することではないだろうか。例えば、クルゼフスキやディバラのような選手をどこでどのように使うかで限られた予算と枠の使い方が変わってくるからだ。

来シーズンの開幕は9月19日~となり、メルカートの締切は10月5日を予定されている。例年よりもプレシーズンが短いため9月のリーグ戦も現有戦力の見極めや新戦力の試運転に使われるだろう。我々に求められるのはいつも以上の忍耐かもしれない。

 

いずれにせよ‘’ゼロからスタート‘’のユヴェントス。誰が残り誰が加入するか今から楽しみだ。

 

(了)

 


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